―座談会―
スキンケア化粧品に求めるもの
今回の連載(第7回)は一風変わった試みです。年代のまったく異なる方々にお集まりいただき、実際のリアルな座談会を実施しました。
年代がまったくバラバラの女性5名です。同じ職場ということもあり、打ち解けた間柄です。さあ、ざっくばらんな雑談が始まります。なお、登場人物のお名前は、皆さん仮名としています。

スキンケアって、何のため?
メンバーのお一人、座談会の先鋒としてナオミさん(40代)が切り出しました。

スキンケアの目的?若さの維持に決まっているでしょう。
はい。本日のテーマは、お肌の手入れ、すなわちスキンケアについてです。どうやら、面倒くさい派と、気合たっぷり派に分かれているようです。
人生のベテラン・エミさん(60歳)が答えました。

私も若い頃はそうだった(=面倒と感じていた)かしら。今はもう、ルーティンが体に染み付いているわ。
両派の感覚は、もともと同じものです。ただ、面倒であっても、それを乗り越え、今では日々の習慣としている方々がいるようです。
皆さんのお喋りは、肌荒れなどの話題から始まりました。ところで、肌が荒れるとか、弱いとか、乾燥するという問題はなぜ生じるのでしょうか。これらはいずれも、「炎症」と関わっています。炎症とは、様々な病気でも登場する現象ですが、体の防御反応の結果、生じるものです。異物が侵入したり、ウイルスやアレルゲン(アレルギーを引き起こす原因物質)が飛び込んできたり、時には紫外線や物理刺激なども、細胞に損傷を与えます。そこで緊急出動してくるのが、体の防御反応、つまり免疫です。

しかし「炎症」は結果なので、本来は原因ではありません。その「炎症」が問題になるのは、慢性化したり、過剰に繰り返されたときです。つまり、免疫の働きで問題が解決されなかったことになります。たとえるなら、山火事を止めることができず、火の手が延々と広がっていく状態です。木々が減って風が通ると、余計に燃えやすくなります。高温にさらされた木は、乾燥し、火が移りやすくなります。その木々が燃え尽きてしまうと、土壌は剥き出しになり、消火のための放水でどんどん流されます。まさに「負のサイクル」です。それと同じことが、皆さんの皮膚で起こっているのです。
敏感肌で悩んできた、一番若いアヤさん(20代)が切り出しました。

新しい化粧品に挑戦してみようと思って変えたら、それが原因で肌が荒れることもしょっちゅうで…。つくづく、自分の肌をうらめしく思います。
アヤさんのような、肌への間違ったスキンケア行為は、他人事ではありません。化粧品とは、いわば化学品を直接肌に塗る行為です。本来は、慎重に行うべきことです。それでも、私たちが化粧品を色々試したりできるのは、そもそも化粧品が、「肌への穏やかな作用」と、「副作用を許容しない」ものだからです。化粧品が医薬品と明確に区別されているのは、この点です。
そうは言っても、知らない間に肌への負荷が増えていることもありえます。法律で定める化粧品の安全性を過度に鵜呑みにしないでください。

皮膚について、どれだけご存知?
この座談会の司会を務めるサキさん(40代)が、話題を切り替えました。

皆さん、具体的にどんなアイテムを使っていますか?私は、断然「浸透力」で選びます!なんか、肌にぐんぐん吸い込まれていくような感覚が好きなんです!
業界内部の人間なら、思わず顔をそむけてしまうようなひと言です。皮膚とは、たとえるなら宇宙服です。内臓を守るために、体表面すべてを覆っているのです。原則、皮膚には、外部からの異物を積極的に通過させる経路は備わっていません。異物が来たとき、まず「皮脂」と呼ばれるオイルの膜で弾き、その先に(角質細胞の)壁が立ちはだかります。壁と壁の間には隙間があり、そこに水と油が何重もの層状に並んだ綿密な膜(細胞間脂質)を形成しています。たとえこれらを乗り越えても、免疫細胞が待ち構えて捕捉する。これが、水の一滴も透さない皮膚の「バリア機能」なのです。
では、化粧品の広告が謳っているのはウソなのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。科学とは確率の問題です。たとえ、1%以下でも、肌に染み込んでいるなら、ウソにはなりません。科学的には、分子量の大きさが500以下になると、「浸透しないとは言えない」です。また、親水性と親油性のバランスによっても、壁の隙間に引き込まれていく可能性が十分あります。さらに、温度や振動を補助的に用いて、各成分を皮膚内部に強制的に押し込んでいくことも可能です。

本音トークで雑談をリードするナオミさんが続けました。

浸透力か…いいわねぇ。年を取ると、肌がバリアを張っちゃうせいか、なかなか有効成分が奥まで届かない気がするのよ。手のひらに残っちゃうみたいな。
ナオミさんの表現は、感覚的にはかなり正確です。保湿を重視してローションを塗布しても、それは肌の表面を濡らしているだけの場合が少なくありません。本連載の第一号で説明したように、木桶に貯めた水こそが、肌の欲する保湿です。しかし、私たちが誤解しやすいのは、木桶の表面についた水滴まで、肌の「保湿」と勘違いしてしまうことです。それは、成分が肌の表層にとどまっているだけのことです。
小さなお子様を抱えて、仕事と家庭との両立に多忙なユキさん(30代)が口をはさみました。

基本的には、面倒くさいが先行しちゃうから、オールインワンで済ませちゃいます。
オールインワン(化粧品)とは、化粧水からクリームまでの複数のアイテムを一つにまとめたものです。便利ではありますが、メーカー的にはかなり「無理のある」商品です。たとえるなら、幕の内弁当の中身をすべてカレールーの中に投じて、カレー弁当と称しているようなものです。
ユキさんはこうも言いました。

なんか栄養素も入っているって・・・実は、自分の買ったオールインワンが、よく分かってないんです。
これは、化粧品に対してのユーザーの正直な反応でもあるでしょう。「化粧品は女性のおもちゃ」と揶揄する人もいますが、楽しむのは結構です。ただし、無警戒に用いるのは注意しましょう。思わぬ肌トラブルにつながる可能性があります。

老化との闘い
座談会の話題は、おのずと老化、すなわちアンチエイジングに移ります。シワやシミと聞いて、ナオミさんが俄然乗り出してきました。お子様とスポーツをするユキさんも、シミが気になるそうです。エミさんは、(シミについて)完全に防げるものではない、と弱音を吐きます。それでも

夜はもう『しっとり』一択。ひたすら保湿!
家庭をもった今日の女性の心境は、ユキさんとエミさんのコメントにも表れていました。

今はもう子育てに追われて、自分のことなんて二の次、三の次…どうでもいいわ!ってなりかけていました

若かった当時に、何を塗っていたかなんて覚えてないわ。仕事もフルタイムだったし。家族もできて、自分の時間なんてほとんどなかったもの。

人生において、よく見かける風景でもあります。仕事や家庭に負われて余裕がなくなる時期、自分のスキンケアに思いを寄せる余裕がなくなりがちです。ましてや小難しい知識を整理して学ぶ時間もないでしょう。スキンケアの裏メッセージには、「もっと自分を大切に」という標語があります。お肌の手入れとは、余裕が持てた人がまさに自分のことを慌てて考え直すことなのかもしれません。
以前の号では、エステサロンに通って、専門家の知見を参考にしてほしいと訴えています。皮膚の科学的理解は極めて難しく、まだ解明されていないことも多々あります。そこに個人差の問題が加わるため、安易な解決策をお薦めしにくいのです。
加齢によるご自身の変化を、ナオミさんははっきりと感じています。

朝と晩(スキンケアをしても)、キリがない気がする。例えば、朝、家を出て車に乗って会社に着くまでの間に、もう乾燥してるなぁって感じたりする。
人間が歳を取ると、なぜ乾燥してしまうのかを考えてみましょう。前述の、「バリア機能」ですが、もっとも大事なのは、体の中の水分を蒸発させないことです。(外から)水を与えるのではなく、(ご自身の)水を守ることが重要です。実は、私たちの教科書シリーズの第2回 『水』 にある、こんな行からもそのことが説明されています。
バリア機能の「緩み」とは三点です。第一に、加齢によって皮脂の分泌量が減少します。オイルの蓋が不十分になると、皮膚から水分が蒸発しやすくなります。それだけではありません。肌表面を構成していた壁にも問題が表れます。この壁は、肌の内部から一ヶ月かけて上昇してきた角質細胞が、爪のように核を失って積み重なったものです。最後には一枚ずつ剥がれていくサイクルを、「ターンオーバー」と呼びます。このサイクルが延びてしまうと、「壁」に綻びが生じます。この緩みが第二の問題です。さらに、壁と壁との間を担う膜構造の中で、水分を抱えているのが天然保湿因子と呼ばれるセラミド等の物質です。このセラミドの合成量が減ってしまうことも、皮膚内部を乾燥させる第三の要因です。これら三つの要因は、総じて若い頃にあったはずのものが失われてしまうという現象です。
司会のサキさんが、熱を込めて言いました。

皆さんは、ちゃんとプロに相談したりしますか?ネットの情報とかは参考にしますか?
60歳のエミさんも続けました。

(当時は)小さかったシミが、どんどん広がっちゃって。あの時もうちょっと気にしておけばよかったって、後悔している。
お二人が言うのは、何かが減るだけでなく、余計なものが増えることを指しています。糖化した細胞が増え、シミが増え、いわゆる「老け顔」になっていくのです。ちなみに糖化とは、たとえるなら、伸びのよかった輪ゴムが、時間とともに固くなり、切れやすくなって、変色してしまうのと同じです。シミは、細胞を守るために黒くなった変化が元に戻らなくなった現象です。いずれにしても、生命として細胞が生まれ変わっていくリバイバルの力が弱くなることを総じて「老化」と呼んでいるのです。

【引用】
一日に人間が飲む水の量は、人によって差異はありますが、2.5 リットルとします。その一部は食物中に含まれていたり、栄養素の分解から得られます。 他方、尿や汗等で排出されるのが2.5リットル。収支は一致します。
ところが、 人間の腎臓で処理している水の量は一日に180リットルとされています。 つまり、生体内の水の大半は、循環系の中で回っているのです。
※プロの教養シリーズ第2回 エステティシャンと考える『水』 より
真摯な研究と、開かれた対話
サキさんから新しい投げかけがありました。

エイジングって言えば、「糖化の対策もした方がいい」って言われたことがあります。
ナオミさんが呼応します。

(ネットの)口コミは、すごくいいのと、悪いのとが混在しているから、結局よく分からなくなっちゃうのよねぇ。
アヤさんはまだお若いので、対人交渉とかには自信がなさそうです。

お店だと、人が色々アドバイスとかしてくれるのはいいのですけど、それが売り込みのためとかだったりしますよね。
化粧品や美容関係の知識が分かりにくいのは、次のことが原因です。一般の消費者の方々と、美容の「プロ」、そしてメーカーなどの研究者が用いる言葉の定義は一致しないことが多々あります。議論をするのに、言葉の定義が定まっていないと、お互いに何を主張しているのか、噛み合いません。たとえば、普通の人が言う「保湿感」と、プロが施術の中で考える「保湿」とは意味が異なります。他方、研究者は、平均的な水分量、標準的な肌質、常識的な外部環境をイメージして、保湿を定義します。これら三者に大きな認識の差があると、特定の個人に対する最適な(保湿の)解を見つけにくくなります。
ここでエミさんがいいことを口にします。さすが年長者です。

スキンケアって、皮膚の話だけじゃないと思うんよ。やっぱり体の健康が一番かな


私たちがよく直面するのは、高度な研究の結果が、多くの場合、常識的な結論に落ち着くことです。しっかり食べる、運動をする、悩んでも仕方のないことをいつまでも考えない、すっきりと眠る、規則正しい生活をする、などなど。どれも、当たり前のように大切なことだと教えられてきたことばかりです。したがって、健康増進こそが、最高のスキンケアなのです。ナオミさんの言葉が核心を突きます。

普段の生活習慣が、そのまま肌に出てくるんだと思う。
なるほど。ここからは、私たちナボカルの独自意見です。座談会の中にも出てきましたが、「何も入ってないシンプルな化粧品の方が肌に優しい」は間違っていません。「何も入ってないなら、効果はなしってことですか」とやりとりは続きますが、効果はあるのです。化粧品には、基材と呼ばれる主原料があり、配合量の7~9割を占めます。そこに様々な成分を溶解させるのが基本形です。この基材が、化粧水、乳液、クリームといったタイプを決定づけるものであり、極論すれば、基材だけでもスキンケアとしての十分な役割を発揮します。これに対し、各化粧品を特徴づける有効成分の配合量は微量であることが一般的です。なぜなら、肌への安全性が求められる化粧品にとって、個性的な成分は、副作用や相性の問題が出にくい量に制限されるからです。日常使いをする化粧品については、できる限り、シンプルな処方がいいと思われます。
当社の業務用化粧品は、余計なものが「何も入っていない」配合を特徴としている肌にやさしい化粧品です。もしも、何かの成分を意図的に用いる場合、まずは、肌の問題を明確にしてから、短期・応急的に投与するのが望ましいと考えます。あとは、肌自身の治癒力を見定めながら、徐々に「何も入っていない」スキンケアに戻していく。この考え方は、商業主義が先行する市販の化粧品とは一線を画するものです。健康な肌の細胞が、自律的に動いている仕組みを、わざわざ人為的に撹乱させる必要はない、と私たちは考えるからです。ましてや、大半の化粧品には、界面活性剤が入っています。それは最も大切な皮膚の油分バリアを溶解させるものです。化学品に安易に頼るくらいなら、むしろ、良心的なサロンに行って、マッサージのような施術による血行改善をお薦めします。それが、化粧品メーカーらしからぬ、私たちナボカルからのアドバイスです。

―座談会―
スキンケア化粧品に
求めるもの
今回の連載(第7回)は一風変わった試みです。年代のまったく異なる方々にお集まりいただき、実際のリアルな座談会を実施しました。
年代がまったくバラバラの女性5名です。同じ職場ということもあり、打ち解けた間柄です。さあ、ざっくばらんな雑談が始まります。なお、登場人物のお名前は、皆さん仮名としています。
・・・
スキンケアって、
何のため?
メンバーのお一人、座談会の先鋒としてナオミさん(40代)が切り出しました。

スキンケアの目的?若さの維持に決まっているでしょう。
はい。本日のテーマは、お肌の手入れ、すなわちスキンケアについてです。どうやら、面倒くさい派と、気合たっぷり派に分かれているようです。
人生のベテラン・エミさん(60歳)が答えました。

私も若い頃はそうだった(=面倒と感じていた)かしら。今はもう、ルーティンが体に染み付いているわ。
両派の感覚は、もともと同じものです。ただ、面倒であっても、それを乗り越え、今では日々の習慣としている方々がいるようです。
皆さんのお喋りは、肌荒れなどの話題から始まりました。ところで、肌が荒れるとか、弱いとか、乾燥するという問題はなぜ生じるのでしょうか。これらはいずれも、「炎症」と関わっています。炎症とは、様々な病気でも登場する現象ですが、体の防御反応の結果、生じるものです。異物が侵入したり、ウイルスやアレルゲン(アレルギーを引き起こす原因物質)が飛び込んできたり、時には紫外線や物理刺激なども、細胞に損傷を与えます。そこで緊急出動してくるのが、体の防御反応、つまり免疫です。

しかし「炎症」は結果なので、本来は原因ではありません。その「炎症」が問題になるのは、慢性化したり、過剰に繰り返されたときです。つまり、免疫の働きで問題が解決されなかったことになります。たとえるなら、山火事を止めることができず、火の手が延々と広がっていく状態です。木々が減って風が通ると、余計に燃えやすくなります。高温にさらされた木は、乾燥し、火が移りやすくなります。その木々が燃え尽きてしまうと、土壌は剥き出しになり、消火のための放水でどんどん流されます。まさに「負のサイクル」です。それと同じことが、皆さんの皮膚で起こっているのです。

敏感肌で悩んできた、一番若いアヤさん(20代)が切り出しました。

新しい化粧品に挑戦してみようと思って変えたら、それが原因で肌が荒れることもしょっちゅうで…。つくづく、自分の肌をうらめしく思います。
アヤさんのような、肌への間違ったスキンケア行為は、他人事ではありません。化粧品とは、いわば化学品を直接肌に塗る行為です。本来は、慎重に行うべきことです。それでも、私たちが化粧品を色々試したりできるのは、そもそも化粧品が、「肌への穏やかな作用」と、「副作用を許容しない」ものだからです。化粧品が医薬品と明確に区別されているのは、この点です。
そうは言っても、知らない間に肌への負荷が増えていることもありえます。法律で定める化粧品の安全性を過度に鵜呑みにしないでください。
皮膚について、
どれだけご存知?
この座談会の司会を務めるサキさん(40代)が、話題を切り替えました。

皆さん、具体的にどんなアイテムを使っていますか?私は、断然「浸透力」で選びます!なんか、肌にぐんぐん吸い込まれていくような感覚が好きなんです!
業界内部の人間なら、思わず顔をそむけてしまうようなひと言です。皮膚とは、たとえるなら宇宙服です。内臓を守るために、体表面すべてを覆っているのです。原則、皮膚には、外部からの異物を積極的に通過させる経路は備わっていません。異物が来たとき、まず「皮脂」と呼ばれるオイルの膜で弾き、その先に(角質細胞の)壁が立ちはだかります。壁と壁の間には隙間があり、そこに水と油が何重もの層状に並んだ綿密な膜(細胞間脂質)を形成しています。たとえこれらを乗り越えても、免疫細胞が待ち構えて捕捉する。これが、水の一滴も透さない皮膚の「バリア機能」なのです。

では、化粧品の広告が謳っているのはウソなのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。科学とは確率の問題です。たとえ、1%以下でも、肌に染み込んでいるなら、ウソにはなりません。科学的には、分子量の大きさが500以下になると、「浸透しないとは言えない」です。また、親水性と親油性のバランスによっても、壁の隙間に引き込まれていく可能性が十分あります。さらに、温度や振動を補助的に用いて、各成分を皮膚内部に強制的に押し込んでいくことも可能です。
本音トークで雑談をリードするナオミさんが続けました。

浸透力か…いいわねぇ。年を取ると、肌がバリアを張っちゃうせいか、なかなか有効成分が奥まで届かない気がするのよ。手のひらに残っちゃうみたいな。
ナオミさんの表現は、感覚的にはかなり正確です。保湿を重視してローションを塗布しても、それは肌の表面を濡らしているだけの場合が少なくありません。本連載の第一号で説明したように、木桶に貯めた水こそが、肌の欲する保湿です。しかし、私たちが誤解しやすいのは、木桶の表面についた水滴まで、肌の「保湿」と勘違いしてしまうことです。それは、成分が肌の表層にとどまっているだけのことです。

小さなお子様を抱えて、仕事と家庭との両立に多忙なユキさん(30代)が口をはさみました。

基本的には、面倒くさいが先行しちゃうから、オールインワンで済ませちゃいます。
オールインワン(化粧品)とは、化粧水からクリームまでの複数のアイテムを一つにまとめたものです。便利ではありますが、メーカー的にはかなり「無理のある」商品です。たとえるなら、幕の内弁当の中身をすべてカレールーの中に投じて、カレー弁当と称しているようなものです。
ユキさんはこうも言いました。

なんか栄養素も入っているって・・・実は、自分の買ったオールインワンが、よく分かってないんです。
これは、化粧品に対してのユーザーの正直な反応でもあるでしょう。「化粧品は女性のおもちゃ」と揶揄する人もいますが、楽しむのは結構です。ただし、無警戒に用いるのは注意しましょう。思わぬ肌トラブルにつながる可能性があります。
老化との闘い
座談会の話題は、おのずと老化、すなわちアンチエイジングに移ります。シワやシミと聞いて、ナオミさんが俄然乗り出してきました。お子様とスポーツをするユキさんも、シミが気になるそうです。エミさんは、(シミについて)完全に防げるものではない、と弱音を吐きます。それでも

夜はもう『しっとり』一択。ひたすら保湿!
家庭をもった今日の女性の心境は、ユキさんとエミさんのコメントにも表れていました。

今はもう子育てに追われて、自分のことなんて二の次、三の次…どうでもいいわ!ってなりかけていました

若かった当時に、何を塗っていたかなんて覚えてないわ。仕事もフルタイムだったし。家族もできて、自分の時間なんてほとんどなかったもの。
人生において、よく見かける風景でもあります。仕事や家庭に負われて余裕がなくなる時期、自分のスキンケアに思いを寄せる余裕がなくなりがちです。ましてや小難しい知識を整理して学ぶ時間もないでしょう。スキンケアの裏メッセージには、「もっと自分を大切に」という標語があります。お肌の手入れとは、余裕が持てた人がまさに自分のことを慌てて考え直すことなのかもしれません。
以前の号では、エステサロンに通って、専門家の知見を参考にしてほしいと訴えています。皮膚の科学的理解は極めて難しく、まだ解明されていないことも多々あります。そこに個人差の問題が加わるため、安易な解決策をお薦めしにくいのです。

加齢によるご自身の変化を、ナオミさんははっきりと感じています。

朝と晩(スキンケアをしても)、キリがない気がする。例えば、朝、家を出て車に乗って会社に着くまでの間に、もう乾燥してるなぁって感じたりする。
人間が歳を取ると、なぜ乾燥してしまうのかを考えてみましょう。前述の、「バリア機能」ですが、もっとも大事なのは、体の中の水分を蒸発させないことです。(外から)水を与えるのではなく、(ご自身の)水を守ることが重要です。実は、私たちの教科書シリーズの第2回 『水』 にある、こんな行からもそのことが説明されています。

【引用】
一日に人間が飲む水の量は、人によって差異はありますが、2.5 リットルとします。その一部は食物中に含まれていたり、栄養素の分解から得られます。 他方、尿や汗等で排出されるのが2.5リットル。収支は一致します。
ところが、 人間の腎臓で処理している水の量は一日に180リットルとされています。 つまり、生体内の水の大半は、循環系の中で回っているのです。
※プロの教養シリーズ第2回 エステティシャンと考える『水』 より
バリア機能の「緩み」とは三点です。第一に、加齢によって皮脂の分泌量が減少します。オイルの蓋が不十分になると、皮膚から水分が蒸発しやすくなります。それだけではありません。肌表面を構成していた壁にも問題が表れます。この壁は、肌の内部から一ヶ月かけて上昇してきた角質細胞が、爪のように核を失って積み重なったものです。最後には一枚ずつ剥がれていくサイクルを、「ターンオーバー」と呼びます。このサイクルが延びてしまうと、「壁」に綻びが生じます。この緩みが第二の問題です。さらに、壁と壁との間を担う膜構造の中で、水分を抱えているのが天然保湿因子と呼ばれるセラミド等の物質です。このセラミドの合成量が減ってしまうことも、皮膚内部を乾燥させる第三の要因です。これら三つの要因は、総じて若い頃にあったはずのものが失われてしまうという現象です。
司会のサキさんが、熱を込めて言いました。

皆さんは、ちゃんとプロに相談したりしますか?ネットの情報とかは参考にしますか?
60歳のエミさんも続けました。

(当時は)小さかったシミが、どんどん広がっちゃって。あの時もうちょっと気にしておけばよかったって、後悔している。
お二人が言うのは、何かが減るだけでなく、余計なものが増えることを指しています。糖化した細胞が増え、シミが増え、いわゆる「老け顔」になっていくのです。ちなみに糖化とは、たとえるなら、伸びのよかった輪ゴムが、時間とともに固くなり、切れやすくなって、変色してしまうのと同じです。シミは、細胞を守るために黒くなった変化が元に戻らなくなった現象です。いずれにしても、生命として細胞が生まれ変わっていくリバイバルの力が弱くなることを総じて「老化」と呼んでいるのです。
真摯な研究と、
開かれた対話
サキさんから新しい投げかけがありました。

エイジングって言えば、「糖化の対策もした方がいい」って言われたことがあります。
ナオミさんが呼応します。

(ネットの)口コミは、すごくいいのと、悪いのとが混在しているから、結局よく分からなくなっちゃうのよねぇ。
アヤさんはまだお若いので、対人交渉とかには自信がなさそうです。

お店だと、人が色々アドバイスとかしてくれるのはいいのですけど、それが売り込みのためとかだったりしますよね。
化粧品や美容関係の知識が分かりにくいのは、次のことが原因です。一般の消費者の方々と、美容の「プロ」、そしてメーカーなどの研究者が用いる言葉の定義は一致しないことが多々あります。議論をするのに、言葉の定義が定まっていないと、お互いに何を主張しているのか、噛み合いません。たとえば、普通の人が言う「保湿感」と、プロが施術の中で考える「保湿」とは意味が異なります。他方、研究者は、平均的な水分量、標準的な肌質、常識的な外部環境をイメージして、保湿を定義します。これら三者に大きな認識の差があると、特定の個人に対する最適な(保湿の)解を見つけにくくなります。
ここでエミさんがいいことを口にします。さすが年長者です。

スキンケアって、皮膚の話だけじゃないと思うんよ。やっぱり体の健康が一番かな

私たちがよく直面するのは、高度な研究の結果が、多くの場合、常識的な結論に落ち着くことです。しっかり食べる、運動をする、悩んでも仕方のないことをいつまでも考えない、すっきりと眠る、規則正しい生活をする、などなど。どれも、当たり前のように大切なことだと教えられてきたことばかりです。したがって、健康増進こそが、最高のスキンケアなのです。ナオミさんの言葉が核心を突きます。

普段の生活習慣が、そのまま肌に出てくるんだと思う。
なるほど。ここからは、私たちナボカルの独自意見です。座談会の中にも出てきましたが、「何も入ってないシンプルな化粧品の方が肌に優しい」は間違っていません。「何も入ってないなら、効果はなしってことですか」とやりとりは続きますが、効果はあるのです。化粧品には、基材と呼ばれる主原料があり、配合量の7~9割を占めます。そこに様々な成分を溶解させるのが基本形です。この基材が、化粧水、乳液、クリームといったタイプを決定づけるものであり、極論すれば、基材だけでもスキンケアとしての十分な役割を発揮します。これに対し、各化粧品を特徴づける有効成分の配合量は微量であることが一般的です。なぜなら、肌への安全性が求められる化粧品にとって、個性的な成分は、副作用や相性の問題が出にくい量に制限されるからです。日常使いをする化粧品については、できる限り、シンプルな処方がいいと思われます。
当社の業務用化粧品は、余計なものが「何も入っていない」配合を特徴としている肌にやさしい化粧品です。もしも、何かの成分を意図的に用いる場合、まずは、肌の問題を明確にしてから、短期・応急的に投与するのが望ましいと考えます。あとは、肌自身の治癒力を見定めながら、徐々に「何も入っていない」スキンケアに戻していく。この考え方は、商業主義が先行する市販の化粧品とは一線を画するものです。健康な肌の細胞が、自律的に動いている仕組みを、わざわざ人為的に撹乱させる必要はない、と私たちは考えるからです。ましてや、大半の化粧品には、界面活性剤が入っています。それは最も大切な皮膚の油分バリアを溶解させるものです。化学品に安易に頼るくらいなら、むしろ、良心的なサロンに行って、マッサージのような施術による血行改善をお薦めします。それが、化粧品メーカーらしからぬ、私たちナボカルからのアドバイスです。
